SEPT BLEUS

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SEPT BLEUS

BLOG

2010.07

11

2010.07.11

人形のお話

40年間パリに住んでいる画家のご夫婦、篠原土世さんと日浅和美さん。日々、作品と向き合う作業をずっと続けている素敵なカップル。日本でも交互に時々個展を開いています。バンクーバーに住んでいる伯母の古くからの知り合いで、10年以上前にパリに母と二人で旅行した時に、最初に蚤の市に連れて行っていただいてから、かれこれ10年以上のお付き合いになります。パリに住んでいる時には、両親のように困った時に助けていただいたりいろいろなことを教えていただいたものです。郊外のブロカントにも何度も連れて行っていただいています。彼らのブロカント歴は30年余りなので、家の中には、たくさんのものがあふれているのですが、それぞれが調和して、とても心地がいい空間。パリに行くと、週末一日、ブロカントに連れて行っていただくのですが、朝が早いので、ここのところ、一泊、土世さんのアトリエに泊まらせていただいています。絵やオブジェがたくさんある中に泊まるのもなかなかよいものです。

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お家をお訪ねすると、いつもおいしい日本食をごちそうになります。パリにいるときには、手作りの納豆をお土産にもらって、本当にうれしかったものです。今回も、お手製の干物と納豆とマグロとサーモンのお刺身とごはん。ボイルしたエビをいただきました。旅の途中でおいしい日本食が食べれるのは本当に貴重。

お二人と毎回お話をしていると、いろんな新しい視点に気がつかされます。今回もいくつか私のつぼにはまった話があったのですが、特に、印象的だったのがブロカントで購入した人形のお話。呼ばれるように購入したイタリアのレンチ人形の流れを汲むフェルトで出来た男の子の人形。ボロボロだった人形をきれいに手当てして、洋服や帽子なども、蚤の市で見つけたベルベットの生地などで作ってあげたそう。パリに住み始めた頃に購入した時には、もっと厳しい表情をしていたそうです。彼と向き合うと心をひきしめてがんばるぞという気持ちになるので、土世さんは日本からパリに戻ってくるとまず、彼を描くことから始めていたそうです。ある時、1人ではかわいそうだからと、どこかで見つけてきた人形を隣に置いたところ、顔が赤ら顔になって、彼が嫌がっているのが分かり、思わずとなりの部屋に持って行ったというお話。そして、またある時、たまたま呼ばれるように、顔に針で穴がたくさんあいていてかわいそうだった男の子と出が同じの女の子のお人形をみつけて、また、きれいに手当てをしてあげて、隣に置いたところ、お人形たちの顔つきが俄然優しくなってきたそうです。確かに、土世さんが描いた絵の人形の表情よりも今見るお人形は、ずっとやさしい顔つきになっているように感じました。そして、見る人が見たところによると、この二つのお人形、全然別の時期に別の場所で見つけたそうですが、もともと兄と妹だったとか。ちょうど、パリに来る前に、梨木香歩さんの小説『りかさん』というお話の中にも、日本の市松人形りかさんと、他の人形にまつわる、いろいろ面白いお話を読んだばかりだったので、本当にそういうことがあるのだなあとすごく感慨深くなりました。

そこで、思いだしたのが、私のフランス人形。
小学生の時に、どうしてもフランス人形がほしくて、フランスに行くというおじさんに頼んで、人形を買ってきてもらったのですが、顔が白くて、赤い口紅がはみ出ていて、洋服もネグリジェみたいだったその人形が、自分のイメージと違っていて、あまりかわいがってあげなかったのです。そのうち、気が付いたら陶器の足が、割れてしまっていて、なんだか罪悪感で、人形供養に出さなければと、ずっと、実家に眠っているはずの人形。その人形の話を、和美さんにすると、今からでもかわいがってあげれば、供養になるし、心にわだかまっている何かが解けて、うまくいくようになるわよと。
まずは、自分の人形を、きれいに手当てしてあげて、服や帽子を作り変えて大切にしてあげることから始めてみようと思って実家で探してみたのですが、見つからず。どうも廃棄してしまったよう。本当にごめんなさいフランス人形さん。またどこかに私を必要としている人形がいたら、かわいがって供養してあげようと心に誓いました。

人形に限らず、蚤の市やアンティークショップで見つけたものには、1つ1つ、誰かに使われてきた歴史と魂があるもの。買って収集するのを楽しむだけではなくて、ものに対しても愛情を持って、丁寧に大切に扱わなければと改めて気がつかされました。
土世さんと和美さんを見ていると、本当の意味で豊かな生活をしているなあと毎回思います。初心を忘れずに、心豊かに日々を暮らしていきたいものです。


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