最近 「藤田嗣治 手しごとの家」林 洋子著 という本に出会い、画家としての視点とはまた一味違った角度から、生活全般を自分らしく楽しんでいた藤田嗣治の魅力を改めて感じて、私なりにパリの郊外の最後の住居兼アトリエを訪問した時のことを書いておきたいと思いました。
藤田嗣治さんとの出会いは20歳ぐらいのころ、ある雑誌の編集者とスタイリストのトークショーで、日本にはこんな素晴らしい画家がいたことを最近知ったんだよね。という話を聞いて、その時初めて、藤田嗣治の画集に触れる機会があり、すごく衝撃を受けたのを覚えています。最初に見た絵は、今思えば、代表作の「カフェにて」だったかな。
それから、パリを何度か訪れたり、美術館などで何点かの絵を観る機会があったりして、いつもなんとなく魅かれて、ああそういえばあの時のあの人の絵だなあと、ゆっくりと記憶をつなげていきながら、藤田がパリで活躍していた時代のことについての本や伝記を読む機会もあり、絵だけではなく、彼の生き方などにも興味を持っていきました。
40年間パリに住んでいる画家のご夫婦、篠原土世さんと日浅和美さん。日々、作品と向き合う作業をずっと続けている素敵なカップル。日本でも交互に時々個展を開いています。バンクーバーに住んでいる伯母の古くからの知り合いで、10年以上前にパリに母と二人で旅行した時に、最初に蚤の市に連れて行っていただいてから、かれこれ10年以上のお付き合いになります。パリに住んでいる時には、両親のように困った時に助けていただいたりいろいろなことを教えていただいたものです。郊外のブロカントにも何度も連れて行っていただいています。彼らのブロカント歴は30年余りなので、家の中には、たくさんのものがあふれているのですが、それぞれが調和して、とても心地がいい空間。パリに行くと、週末一日、ブロカントに連れて行っていただくのですが、朝が早いので、ここのところ、一泊、土世さんのアトリエに泊まらせていただいています。絵やオブジェがたくさんある中に泊まるのもなかなかよいものです。
フランス好きになったのは、今はなき雑誌「OLIVE」とか、短大に通っているぐらいからフランス映画をいろいろと見るようになって、ファッション、文化、音楽、食べ物等、興味が広がっていった気がします。フランス映画にでてくる女性の強さや、エネルギッシュで情熱的なところなどにカルチャーショックを受けて、ああ、世の中にはこういう女性像もあるのだなあと新鮮な驚きを感じたものです。最初にパリに行ったのが、短大の卒業旅行。2月でとても寒く、言葉も全く分からず、外を歩いていてもすごく緊張感がありました。メニューも読めないので、イメージと全然違う豆だらけのサラダが出てきたり、カフェでサラダにパンがついてくることを知らずに、パンを余計に頼んでしまったり。最初に駅を出て、パリの街を見たときに、なんてきれいなんだろう!!と思ったのを、よく覚えています。今思えば、北駅からの景色がそんなにきれいだとは思いませんが、初めてのヨーロッパの街並みはやはり、衝撃的だったのかもしれません。